その時、僕達は暇を持て余していた。
時計はもう午前4時の少し手前。
金曜の夜から、かれこれ4時間近く車で放浪していた計算になる。
「ちょっと休もうぜ」
僕は助手席の友人ヒロに声をかけると、いつもの駐車場に車を停めた。
郊外のパチンコ屋の駐車場は、僕ら仲間内では都合の良い休憩スペース。
エンジンの音が周囲から消えて、代わりに虫の音が周りを埋めていく。
「ホラよ」
車から降りて煙草に火を着けた僕に、ヒロが側の自販機で買った缶コーヒーをくれる。
「お、悪いな」
ヒロとは高校時代のクラスメイト。
同じ音楽が趣味だったこともあって、一緒にバンドを組んだりした親友である。
結局地元に残ったのは、同じクラスでは彼だけになってしまった。

「・・・で、さっきの女の連絡先はゲットしたわけ?」
ヒロの期待いっぱいの言葉。
「一応ね」
僕は地面で煙草をもみ消すと、缶コーヒーを開けながら答える。
「ショートの方は自宅とベル番ゲットしておいた」
「お〜、さすが営業マンだね」
ヒロは素直に関心していた。
僕はヒロの言うとおり、高校卒業と同時に通信システムの営業をしている。
お陰でこう言う交渉ごと(・・・微妙だが)は、得意分野になってしまった。
見た目はヒロの方がカッコイイが彼は話下手。
僕たちはお互いの欠点をカバーし合える、最強のコンビでもあった。
「俺はロングの方で頼むよ」
あと女の子の好みが一致しないのも、最強コンビたる由縁。

僕たちは8時間ほど前、街でセコセコとナンパに勤しんでいた。
今日はかなり運が良かったらしく、開始数分でかなりイケてる2人組を発見し、早速声をかけて仲良くなった次第である。
結局4人でカラオケに行き、いい感じで盛り上がった。
2人はお互いの好みにピッタリで、ここ数ヶ月で最高のカラオケタイムだった気がする。
結局僕らはその後、彼女達の門限に合わせて自宅の近くまで送っていった。
その後車でブラブラしながら今に至る。

「これからどうする?」
ヒロの言葉で時計に目をやると、もう朝方近くになっていた。
「久しぶりに山に行こうか」
「いいね〜」
ヒロはすぐに同意する。
僕は缶コーヒーを飲み干すと、車のキーを回してエンジンをかけた。

まだ目覚めていない街並みに、僕は遠慮なくアクセルを踏んでバイパスに抜ける。
昼間なら信じられないくらいのスピードで、いつもの山道に突入した。
僕にとってそこは何百回と往復したホームグランド。
タイヤは音を立てていたが、高速道路以上のスピードを出しているにしては、車は安定していたと思う。
目的の場所には十分ちょっとで着いた。
そこは小さい広場になっていて、僕はそこに車を停めるとエンジンを切る。
街の西側にある山の中腹にあるその場所からは、これから目覚めようとする街の夜景が見えていた。
上を見上げると少し明けかかった空に、まだ万天の星が輝いている。
それは街の夜景と1つになり、そこには大きな星空があるような錯覚を捉われていく。
「そろそろだな」
僕らはガードレールに寄りかかって、その瞬間を待つことにした。
やがて東の空が白み始め、太陽が僕たちに今日最初の光を当てる。
それと同時に街の夜景と空の星が、溶けるように一斉に姿を消した。
「朝」のスタートである。
僕のヒロはこの瞬間が好きだった。
「そうだ、今度あの女達つれてこようぜ」
「女達って、さっきのか?」
ヒロは無言で頷く。
彼はさっき出会ったばかりのロングヘアの彼女が、随分とお気に入りならしい。
女達・・・と複数形にしたのは、僕への気遣いからだろうか。
「そうだな、一眠りしたら連絡してみるよ」
そういう僕も満更ではなかった。
やがて太陽が完全に姿を現したことを確認してから、僕達はそれぞれの自宅に向かう。
今日はまだ土曜日。
夜に備えて、十分に眠っておく必要があった。
また今日も楽しい夜になることを祈って・・・。

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